記憶の天窓

好きなものの記憶

Colorsの話

 

最近の私の好きアイドル、さとりモンスター。
(最近と表現するほどの長さではなくなってきた気もするのだけど)

そんなさとりモンスターには三島想平提供楽曲がたくさんあるのですが、今回はその中からColorsの話を。

 

 

 

と言いながらも、この曲は作詞のみが三島さんで、作曲はリッチー鎗ヶ崎さん。サウンド面も本当に良いのですが、ここでは歌詞の話をさせてください。

 


初聴時の第一印象は、三島さんにしてはだいぶ真っ直ぐな詩で来たな、というものでした。
三島さんが他のアーティストに提供する曲を全て網羅しているわけではないので何とも言えないのですが、恐らくここまでストレートなのは珍しい。メッセージ性を加えるにしても多かれ少なかれ物語性や情景を入れてくるタイプだと思っていたので、ここまでがっつり歌ってほしいことがそのまま言葉になっているのは少し意外。
でも薄っぺらくはなく、むしろアイドルが歌うにしてはちょっと泥くさい(好意の意味で言ってます)。

 


この曲における『わたし』はどちらかというと悲観的な子。
「叶わない夢もある」とため息を繰り返す子。
この時点でだいぶ大衆的なアイドル像からは外れるわけじゃないですか。アイドル通り越した向こう側の、ただの人間。
そんな子の手をとってくれる人がいるわけで。この描写はグループを想起させる。

 


サビの「輝け」とかも、キラキラした意味だけじゃなくて、願望の感覚の方が強く思えたのね。輝け、って言って輝けるのがアイドルだけど、ただの人間はそう言って輝けるわけもない。
でも『きみ』となら輝く未来に行けるかもしれない。そんな歌。

 

誰かの替わりじゃない色が
美しい景色を創っていく

三島さんはさとりを見ながら『個性』にすごく焦点を当てているんだな、というのは前々からわかっていて。
さとりはグループ立ち上げから紆余曲折あって今の形になり、立ち上げ時のメンバーは今一人もいないのだけど、今の6人は一人一人個性がバラッバラで面白いバランスなのはオタク目線にもすごく思っていて。
これは地下寄りのアイドル業界としては暗黙の了解みたいなものだけど、アイドルグループのメンバーってところによってはすごく入れ替わりが激しいんですね。
前述の通りさとりも例に漏れずなんですけど。
とはいえ、人数が減ったら足せばいい、替えがきく、なんてアイドルでも会社員でも何でも気持ちがいい話ではないじゃないですか。

誰かの替わりじゃない

人間的な個性の話だと思うよ。でも、多分ほんの少しだけ、ここはそういう意味なんじゃないかなって思っちゃうんですよね。

 


1番の『きみ』は対メンバーとか対ファンへのメッセージに思えていたのだけど、2番のサビで「あっ」となった。

瞬け、星よ
きみは、わたし
迷わないように手繋ごう


ここで『きみ』が自分自身になる。
なんかここ聞いた瞬間にびっくりしてしまって。対他者のメッセージソングだとずっと思ってたんですよ。だから急に意表つかれたというかしてやられたというか。
自分自身を見失わないための歌でもあることに気付かされた瞬間に大好きになった。

 


三島さんが歌詞で『世界』を美しいと言ったことはさとりじゃない曲であるんだけど、その時は「苦しくなるほどこの世界は美しい」だったんだよね。悔しさとか悲しみとか抱えながらも「美しい」と思っている。
多分Colorsで歌われる「美しい世界」も純粋な美しいじゃない。「これから起こるすべてのこと」も、きっと楽しいことだけじゃない。それでも彩っていくこと。

 

 

Cメロこそ表記を初めて見た瞬間にひっくり返ってしまった。歌詞中に「さとり」が入ってくることでさとりモンスターの曲だと明言するようなことは多々あった。
でも、さっきの替わりの話にも若干結びつくのだけど、こんなの普通に博打じゃないですか。

三島さんはこの曲の案が上がってきた時に「歌詞を書かせてほしい」と自分から言ったそうな。その時にどこまで決めてたのかは知らない。ここまで大胆な手に出れる人だとは思わなかった。
多分、いつかさとりモンスターじゃなくなっても、さとりモンスターであったことを誇りに思えるように。この6人でいたことを刻むために。



三島さんはある程度人となりがわかれば当てがきができる人です。むしろ積極的にする人です。
この曲が発表された時の三島さんのコメントに
「メンバーそれぞれの様々な感情の器になれるような言葉をあげたい」
というのがあったのね。
「宝物になるように」とかがありがちに思うのだけど、「器になれるような」という言い回しは初めて聞いた。その言い回しは本当に三島想平くらいしか使わないのでは。

大事にしてもらいたい、とかじゃない(大事にはしてほしいだろうけどきっとそこが主ではなくて)。
楽しい、嬉しい、悲しい、怒り、幸せ、その全てを受け止めて支えになるような曲をあげたかったのかな、というのが素人目の所感です。だから綺麗な情景描写や物語性を少なくして、とにかく真っ直ぐな言葉に振り切ったのかな。
アイドルとしても、人間としても、生きていく上で塗れる感情と希望の歌。三島想平にしか書けない、アイドルへの究極の歌詞だと思う。