記憶の天窓

好きなものの記憶

FREE GAY MORNINGの話

 

母と姉を起こさないように大音量のアラームを急いで止めて、猫を踏まないように真っ暗な家の中を歩き回って支度をして、まだ空が深い青色をしているうちに家を出る。
最初は始発の二本後くらいの電車に乗っていたのが、段々始発で向かうようになった。電車の窓から朝焼けを眺めて、駅からアイソまで小走りで向かう。
開かない目に抉じ入れたコンタクトの痛みに耐えながら、早朝の新宿が意識を宿していくのを見ていた。
並びながら眠る人、ご飯を食べる人、化粧をする人、まだ寝起きの通らない声で友達と話す人、夜のライブの時の開場待ちより静かで淡々とした時が流れていた。

 

ラジオ体操を思いきり間違える日もあった。歌声があまり出ない日もあった。それでも四人は、朝でも夜のライブと変わらずいつでも全力で、本気で、揺るぎないアイドルで、一日の始まりに四人の姿を見れるのがすごく嬉しかった。
ライブと特典会が終わって外に出て、日が高く昇っていることに毎回驚いた。不思議な心地だった。

 

朝のライブってどんなのだろう、とわくわくした初日や、遠征してきたおなカマさんたちと一緒に見た日や、朝のライブ後におなカマさんたちとご飯を食べた日や、そのままゲイワゴンを探しに行った日、夜のライブまで回した日。
ライブそのものだけでなくて、朝のライブだからこそ、その後の時間にも楽しみがあった。
バイトに行かないといけない日も、ライブを見た後だったから頑張れた。
最初は朝起きるの大変と思ってたけど、朝のライブって利点が意外と多い。

 

FGM全13公演、私が休んだのは一日だけで、12公演は見に行った。
あっという間だった。FGMが終わったことに気づいたらもう八月が終わろうとしていた。こんなに早く過ぎ去る夏は初めてだった気がする。

 

きっともう二度と来ない、夢みたいにキラキラした夏の朝を一生忘れたくない。