記憶の天窓

好きなものの記憶

9月最初のFGLの話

 

2018年9月1日 2部

 

始まってすぐには気づかなかった。
多分彼を推してる人たちはすぐに悟ったのかもしれないけど、私はいつもより笑わないな、としか思わなかった。

 

ぺいちゃんの声が出なくなることは珍しくない。三人より煽ったり叫んだりすることも多いから、声の消耗は誰よりしているはず。
1部がどうだったのか、私は行けなかったから知らないけれど、昨日、8月31日の時点では絶好調だった。逆に昨日で使い果たしたのか、実際のところはよくわからない。
高音が出ないことを自覚した瞬間の悔しそうな顔。ぺいちゃんの様子を悟ってか少し不安の滲む三人の顔。それでもミキちゃんだけは、なるべくいつも通りに微笑んでいた。

 

リバの落ちサビ、顔を半分手で覆って張り上げて歌うぺいちゃんの姿。
命が削れていく音がした。私の命かぺいちゃんの命か分からない。多分両方。普通に歌っても消耗が激しいのに、そんなに注いだら。
昨日初見だったリバ、私は恐らく毎回冷静に見られないだろうと思った。今日の時点で、既に冷静を通り越して混乱だった。
そしてその張り上げて歌う姿が最後だったように、尚更高音が出なくなった。


カエルの一番、声が出ないのが悔しくて悔しくて仕方ないのがすぐに分かった。FGMで声が出ないことはあっても、それでも笑っていたぺいちゃんが、ほとんど笑わなかった。たまに強がるように微笑むのが苦しかった。
そんな状態で入った二番、ぺいちゃんのパート、ぺいちゃんではない低い声が重なって聞こえた。
かなり自然で、私は状況を把握するのが遅れた。ぺいちゃんの後ろで微笑みながら声を重ねているミキちゃんの姿を確認して情緒が壊れた。
押し出されるところでフロア側に行かず、くるっと回転して後ろを向いたぺいちゃんが三人を抱きしめていた。EASTの時みたいだった。そのまま泣き出したぺいちゃんは小さな子供のような顔をしていた。

でもそれで安心したのか、次のまるもうけの時にはいつものぺいちゃんが戻ってきた。
素直に楽しそうに歌い踊る姿に安心した。


『青春は何度でもやり直せるなんて嘘だ』
の二番のぺいちゃんパート。
ぺいちゃん自らキーを下げた。もう無理やり声を張って高音を出そうとはしなかった。
いつもより低い、男性的な声で歌う。
男性を好きになったことで苦しんだことのある、ぺいにゃむにゃむになる以前の、私は名の知らない誰かだった。
その誰かとぺいちゃんが重なる瞬間。儚くて綺麗で涙が出た。既に出ていたけれど、余計に溢れた。


こんなに足掻くぺいちゃんを私は初めて見た。
察しの通り、ぺいちゃんばかり見ていた。心配だったという理由はもちろんあるし、でもそういうのを抜きにしても目が離せなかった。目を離しちゃいけないと思った。

 


私は、ぺいちゃんの声が出なくなると自分の声も上手く出なくなります。振り絞れば出ることは分かっているのだけど、ぺいちゃんに連動するように出なくなって喉が詰まる。
ぺいちゃんを心の底から愛する人がたくさんいる中で、私はぺい推しだとは言えなくて、でも私にとってぺいちゃんは推しとはまた違う、自分でもよく分からないけど大切な存在です。『推し』じゃなくて、でも『箱推しの中の一人』にすることもできない、不思議な人。

そんな私ですらこんなに気が動転してしまったから、ぺい推しの人たちはもっと気が気でなかったのではと思ってしまいました。
超ハードな夏が終わってその反動が返ってくる頃だからね、無理しないでほしい。
と言っても無理する人たちのような気がする(というかそう)から、できるだけ気をつけて、いつも元気に笑っていてほしい。
ぺいちゃんがぺいちゃんで、そのぺいちゃんの側にいるのが三人で良かったよ。
と、改めて思った9月最初のFGLでした。